笹倉鉄平『空よ、光よ』2025年11月上旬リリース作品（ジクレー・版画）

『空よ、光よ』

忘れられない景色がある。
広い、広い湖の上には、やはり広い空があった。

＊　　＊　　＊

琵琶を逆さにしたような形の、日本一大きな湖の畔で
この浮御堂は、まるで湖面に浮かんでいるかのようだった。
日暮れ前、水平線辺りから少しずつ黄色味が差し始め
真っ青だった空が徐々に黄緑へと変わりゆく様が美しかった。

それは、右腕と首を痛め、絵筆が握れなかった時期で・・・
”早く完治して元通り絵が描けますように”と
御堂から、神秘的な空に向かって思わず祈っていた。

眺める雲は、ゆっくりゆっくりと形を変え
空の色は絶え間なく次々に移ろってゆく。
大らかな自然と穏やかな時の流れに感覚をゆだねるうち、
心身ともに良い方向へと変わってゆくような気がした。

それから四年程たった今、不調を克服して絵を描けている。
信じる気持ちと、あの日の祈りを託した空と光に感謝を——

笹倉鉄平
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