笹倉鉄平『音色はサウダーデ』2025年3月上旬リリース作品(ジクレー・版画)
『音色はサウダーデ』 ヨーロッパ西端の国ポルトガルの南端に在る街ファロから、 スペイン国境の方向へと、海岸線沿いの町を巡っていた。 人々は大らかで、時間がゆるやかに流れているのを感じる。 海へと流れ込む川の両岸に沿って、 カフェやレストランが並んでいるエリアと出会い、 眺めのよい席から景色をゆっくりと観察することが出来た。 日暮れ時、もう一度同じ場所へ行ってみると・・・ 川辺は宵の表情へと変わり、ボサノバの生演奏が響いていた。 耳あたりの良い囁くようなポルトガル語の歌声と 柔らかく滑らかなギターの旋律に、気分も軽やかになってゆく。 今、この場所の空気になんと似合っているのだろう、と心動かされた。 * * * タイトルにある“サウダーデ”というポルトガル語は、 他の言語でひと言にして訳すのが難しい、感覚的な言葉とのこと。 簡単に訳せば「郷愁、哀愁、切ない思い出」となるらしいが、 その中に、複雑で多様で独特なニュアンスをはらんでいるという。 そして、ポルトガルの人々がとても大切にする感情なのだそう。 その夜、ゆったり響くボサノバを聞きながら、見て、感じた、サウダーデ。 ノスタルジックなくせに、甘さや奏でる喜びなども感じられる。 その複雑な音色が、聴覚(耳)でなく視覚(目)でも伝わるように 絵で表現できないだろうか・・・と。 切ない感情を寒色で。甘さや軽やかさを暖色で。 異なる色調を組み合わせてゆきながら、 自分の心に響いた“サウダーデ”の音を、色で描こうと挑んだ。 笹倉鉄平 “笹倉鉄平作品一覧”の頁に戻る
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