笹倉鉄平『どうしたの?』2018年リリース作品
『どうしたの?』 “A Dog at the Dooryard” 春のアメリカ北東部。 マサチューセッツ州からバーモント州にかけて、車で北上した。 長閑で平和そうな、小さな町村の姿が、次々に現れては過ぎてゆく。 この辺りは、かつて欧州からの、特に英国系の入植者が切り拓いた 現在のアメリカ"発祥の地"で、ニューイングランド地方と呼ばれている。 イギリスの建物が石造りであるのに対して、家々の外観は・・・ 豊富に得られる森林資源により木材の多用が特徴的で、外壁は板が横張りされ、 家の正面にはポーチやベランダが設けられ、芝の敷かれた前庭が広がる。 とても"アメリカらしい"おおらかな印象を受けた。 * * * 大切に育てられた花々あふれる家の前庭には、ちらちらと木漏れ日が躍り、 新緑の季節の心地好く澄んだ空気に、気分も浮き立つような気がする。 こんなにも幸福感あふれる景色の中・・・ なぜか、困ったような眼差しの小さなパグ犬。 どうしたの? 何か困っている? ご主人が家に入ってしまったからかな? それとも、お散歩にでも行きたい? 他に・・・・・・何だろう? 意外な困り顔に、声をかけずにはいられない。 そして、キラキラした黒い目を見ているうちに、ふと気づく。 ――どんなに楽しくても嬉しくても、困っているように見えてしまう顔なんだよね? ――そうか、別に困っているわけじゃないんだね。 笹倉 鉄平 “笹倉鉄平作品一覧”の頁に戻る
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