『青空―アルゼット』、笹倉鉄平2017年リリース作品
『青空―アルゼット』 "The Alzette, under the Blue Sky" アトリエに在る本棚の目立つ位置に、 一冊のスケッチブックを、長い間ずっと横置きにしてある。 気が向いた時、いつでも手に取って見られるように。 そうして、もう5年ほどにもなるだろうか・・・ * * * フランス・ベルギー・ドイツと国境を接する小さな国、ルクセンブルク。 首都ルクセンブルクの街を流れるアルゼット川沿いを散策していると、 これまで描いたことのない、心惹かれる構図の風景に出会った。 天気の良い快適な日で、抜けるような空の青色が、一段と濃く川面に映えていた。 その場でササッとしたスケッチに、帰国して早速に彩色をしてみると、 旧い名画調になりそうで、自分らしさに欠ける気がした。 そこで、別の色調に変えて描き直すものの、 あの場所で心動かされたイメージとは、どこか違ってしまう。 こんな時は経験上、何かひらめかない限り致しようもなく、 スケッチの状態で、時間を置くことしかできなかった。 ある日、京都で川沿いの道を歩いていた時のこと。 斜め陽が当たって輝いている所と、日陰になっている所、 鮮やかな対比を見せている風景に、ハッとひらめいたことがあった。 慌ててアトリエへ戻ると、 スケッチブックを本棚から取り出し、件のページを開けた―― * * * 青い空とアルゼット川、光と陰とが描き出す ピースフルな眺めを思い出しては、 思わず、フゥーっと大きく深呼吸をした。 笹倉 鉄平 “笹倉鉄平作品”の頁に戻る
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