笹倉鉄平『お好きな席へどうぞ』2018年リリース作品
『お好きな席へどうぞ』 “As There Are Chairs and Chairs” カナダのとある小さな村で出会った、光の色・・・ それが、この絵を描くきっかけとなった。 部屋には小さな窓しかないせいか薄暗く、昼なのに電灯も点っていた。 窓は北側に在る為、陽の光は直接入って来ずに、 天気の良い屋外の明るさだけを、強く感じさせる。 そして、何より光の色が青味を帯びていることにハッとした。 通常、青色は影や暗い部分を描く時に使い、 光は、白~黄色系を使って表現することが定石となっている。 しかし、目の前に在る光と陰影は、むしろ逆の色調だった。 この独特の光を描かねば先に進めない・・・背中を押されているような気がした。 しばらく、光と影や色彩の移ろいを観察していると、 突然、脳裏にフラッシュバックした景色があった。 数年前に訪れたアイルランドのティールームの記憶だ。 内部の造りや窓の位置取りが、よく似ていたせいかもしれない。 アトリエへ戻り、当時のスケッチも引っ張り出して、 青い光やインテリアの様子に、自分の理想など加味しながら、 居心地が良さそうな空間の絵を目指した。 制作中、もしもティールームに在る沢山の椅子一つ一つが、 全て違うデザインだったら、どうだろうか?と、ふと思った。 更には、お菓子や食器、額縁、雑貨類なども各々に特色があって。 色々あるけれどバラバラではない、そんなハーモニーを目指して。 “色々ある”からこそ生まれる調和・・・ そこは、より優しく寛容で平和な風景になるような気がするから。 存外、人間や社会の在り様にも、そういった面がある気がしてならない。 笹倉 鉄平 “笹倉鉄平作品一覧”の頁に戻る
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